メイキング・オブ「十番の夜」! パート6

フットボールライフ・ゼロの「十番の夜」の未収録部分を大公開! 【パート6】

※このコーナーでは、フットボールライフ・ゼロに掲載された好評企画「十番の夜」で紹介できなかった部分を紹介していきます。

未収録コーナー


※原稿は今でも手書きというえのきどさん。手書きならではの独特の味わいをもつ原稿の書き方とは?


登場人物;
=えのきどいちろう  =中山淳(編集長)  =後藤伸二(本誌スタッフ)


  えのきどさんは、今も手で書いた原稿をパソコンで打ち直しているんですか?

 そうですね。僕は取材などで移動することが多いんですけど、いいんですよ、手で書くのは。持ってくものが少なくて。

 いつも何で書かれてるんですか?

 鉛筆、コクヨの400。

 で、間違ったときは・・・・・・

 消しゴムで消す。それに、鉛筆と消しゴムはコンビニで売ってるからどこでも調達できるし。
まあ、原稿用紙は文房具屋が開いてない時間だとちょっと大変なので、買い足しておいて、北海道行くときならトランクの中に入れといてって感じで。

 鉛筆派なんですね。

 全部鉛筆ですね、シャーペンより鉛筆。

 鉛筆削りも持ち歩いて?

 鉛筆削りはこういう小っちゃいのあるじゃないですか、アレで。

 僕がすごい印象に残っているのが、パソコンで原稿を書くのは浅草の町を自転車で通るのと一緒で、手書きは歩いて通る感じだって聞いたことですね。

自転車だとすっと通り過ぎて景色を見逃しちゃうけど、歩いて書くといろんなものが見えて、だからゆっくりっとしたモノができあがる、と。

それを聞いて、ああ、なるほどって思って一回やってみたんですよ、手書きで。この仕事を始めたときは僕も手書きだったんですけど、今はもうパソコンに慣れちゃってて、結局ダメでしたね(笑)。

 手が止まってきちゃうでしょ?

 そうなんですよ。これは時間がかかり過ぎるってなって、結局できなくなっちゃったんです。
だから書く覚悟っていうか、一筆目を書くときの頭の部分なんかは、手書きだと違いますね。

パソコンだとイージーにスタートして、ダメだったらいつでも変えられるという感じでやっちゃうからダメなのかもしれないです。

 メールを打つのと手紙を書くのは違いますからね。

 だから難しいですよね、手書きの方が。

 例えば「中山さんはバーレーンに行ったのである」って字を置くじゃないですか。置いた後に、もうここで止まってますから。

 なるほど一回止まるんですね。

 そう。だから例えばこう、3行くらい置いといて、次、そんな手で来るか、みたいな展開が僕の原稿の特徴としてあったりするんですよ。それはそういう理由です。

ここからここに連想が飛んでしまってるっていう手品みたいなのがあるんですけども、手書きは行き過ぎないから、手仕事の感覚でそこで一回止まってたりして。

あるいは、映画でいうモンタージュみたいなことができるんです。こっちのシーンがあり、次の場面が切り替えるところに、この絵とこの絵のイメージの、全然異質な絵がバンって繋がってると、イメージが飛ぶ。

だから極端な例で言うと、俳句とかってそうじゃないですか。あの、『古池や蛙飛び込む水の音』。これはわりと繋がってるけど、これとこれとこれの三つのイメージが、ものすごいバチーンって飛んでるとかさ。
そんなことをやってる世界じゃないですか。

だから、俳句はわりとモンタージュ理論みたいなところがあるんですけど。手書きだと、そういうことができるといえばできるんですよね。

 それはパソコンのキーボードのスクロールじゃないみたいなことですよね。

 そうですね。でも、パソコンはパソコンで武器があって、パソコンでわりと好きなのは、ザーッと文字が書いてあるじゃないですか。それを映画の編集と同じで、削除してくっつける感覚。

そこはやっぱりモンタージュみたいな感覚。1シーンから1シーンに飛ぶっていう。
だから僕はわりと、前にちょっとやったことがあるのは、映画の撮り方でやるみたいな感じで、細かいシーンをいっぱい書いちゃうんですよ。

 先に?

 そう。先に書いて、後は編集の仕方でシーンとシーンをどんどん繋げて、こう、わりと長いものにしていく、みたいな。だから、とりあえず現場では回しとけっていう感じで。

例えばある選手がチームの中で孤立して行く様を、バーっと、特に目標もなく書いていく。それでそのシーンは走りきっちゃう。

で、後で文量が収まるように縮めていくみたいな感じのことをしながら、その後、月を入れてみる、みたいな感じですよ。そうすると、月がものすごく意味を持つようになる。

モンタージュでいうとそうじゃない? ただ、すごい大変な作業だったんですけどね。こういう風にやるとどうなるのかな、と思って。

あと、本で読んだんですけど、たけしさんの映画は、たけしさんの逆算でやってくっていうやり方があって。

 逆算?

 ええ。最終的にどこに着地するかっていうのをまず考える。で、ラストシーンを考えるっていうことをやるんですって。

例えば、たまたま高速道路から目にした風景、川沿いに団地があって主婦が子どもを連れている、みたいな。そんな、「何かいいなあ」っていうシーンがあるとするじゃないですか。

すると、じゃあそこを最後に撮ろう、と。あの人は順撮りなんで、頭から順番に撮ってるんですけど、そこに行き着くためにストーリーは後で考えるみたいな感じで。最後はそこに落とし込むっていう。

ある種ジンワリした余韻のようなものができる絵のイメージっていうか、最後のゴールだけあるっていうやり方らしいんです。

 確かにラストは全部鮮烈ですもんね。それだけ最後を思い出せる映画ってなかなかないですけど、全部思い出せますもんね。でも順撮りにする意味がよくわかんないですね。

 面倒くさいんじゃないの(笑)。

 多分そうなんでしょうね。あんまりテープも使わないみたいですしね。


≪パート6 了≫

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック