メイキング・オブ「十番の夜」! 第2弾 パート3

フットボールライフ・ゼロvol.2の「十番の夜」の未収録部分を大公開! 【パート3】

※今回からは「フットボールライフ・ゼロ vol.2」の誌面ではお伝えすることができなかった「十番の夜」の未収録部分を公開しちゃいます!

未収録コーナー


※海江田さんが金子達仁氏の作品に鮮烈な印象を持ったのはライターを始めた頃だと聞いたえのきどさん。その頃のことを振り返ったえのきどさんが話す「金子達仁病」とは?


登場人物;
=えのきどいちろう  =海江田哲朗  =中山淳(編集長)  =後藤伸二(本誌スタッフ)



 ところで、海江田さんがライターを始めたときに意識していた人っていました? サッカーライターでこの人の書くものは読んでるとか、この人は面白いなとか。

 やっぱり金子達仁さんの影響は大きかったですね。生まれてこのかた、朝からキヨスクに並んで『Number』を買ったのは人生で一回きりですもんね。中山さんが表紙で増版がかかったっていうヤツ。あれは確か朝5時頃にキヨスクに行きましたね。

 朝イチで?

 はい。

 しかもアレ、速報だからインタビューから一週間も経っていなかったんですよね。確か3日か4日しか経ってなかったはずです。

 じゃあ、とりあえずこいつは食い殺しておこうと?(笑)。

 いやいや(笑)。でもこういうことはあまり言いたくないけど、同じくらいの年のヤツで、つまらんことを書くヤツは、言い方は悪いですけどライターを辞めちゃえばいいのにって思ってましたからね。それは特定の誰かっていうわけではないですけど。
でも、そのことをある編集者の方に、「俺、こんな風に思っているんです」って言ったら、「あんまり人に言わない方が良いと思う」って言われましたねけどね(笑)。

 でもそれって正しいと思います、僕は。

 そうですかね、良いのかな。やっぱりあんまり良くないんじゃないですかね。

 いや、正しいと思います。

 思っている分にはまず大丈夫だし、言ってもまあ大丈夫じゃないですか。

 うん、それ自体は良いと思います。アリだと思います。

 僕も編集者に言うこと自体は別に問題ないと思います。

 さっきは金子さんの名前を挙げたけど、それくらい鮮烈だったんですよね。面白いっていうか、あの当時、それほどまでに読みたいと思って買った雑誌って、なかなかありませんでしたから。

 どっちかって言うと、雑誌全体よりも金子さんの作品を読みたかったと?

 あのときはそうでしたね。

 やっぱりあの人はそういう魅力があるんだ。

 金子さんの作品の引きは相当強かったじゃないですか。だから、素直にすごく遠い存在に感じたし。

 そうですよね。じゃあ海江田さんの場合は学生時代、頃合で言うと90年代頃からですか? スポーツライターをやりたいと感じたのは?

 そうですね。

 それは世の中的にいうと本当にアレですよ「金子達仁病」。みんな文体が似ているって『Number』の編集部の人が言ってましたね。ナンバー・ノンフィクションに応募してくる人の作品を見てもそう。それほどみんな影響を受けたんじゃないかな。僕の場合は年代が違うから影響はないんですけどね(笑)。

 えのきどさんの場合はカテゴリー自体が違いますからね。

 でも実際にライターをやってみて、それだけじゃないよねっていうのもあって。で、えのきどさんみたいな書き方をされる方もいたり。後藤健生さんだと学者っぽい書き方というか。まあ、書く媒体によっても違いますけど。
ベテランライターにはベテランと言われるだけの理由があるんだなってわかったのは、大分後になってからですね。

 海江田さんのライターとしての理想形ってどんなものですか? 例えば、痺れる血の気の多い感じの記事を書きたいとか?

 そうですね、誠実なものが書きたいですね。

 誠実なもの?

 はい。できるだけカチっとしたものを書きたいですね。カチっとしてるっていうとあんまり具体的じゃないですけど。

 じゃあ受け手のことを考えましょう。こんな誠実なもの書かれたら泣けちゃうよ、っていうのが良いんですか?

 俺の持っているイメージは、こっちが徹夜してウオーって書いた作品を読んだ読者が「ふーん、面白いね」って次のページをめくるっていう、その軽い感じですね。読者に泣かれるっていうイメージはあんまりないですね。読んで良かったっていうか、フフって言って次のページをめくる、みたいな。

 ジーンとして欲しいんじゃないですか?

 ジーンと、ねえ・・・・・・。ただ、どうしても大袈裟にしたくないっていうのが常にあるんですよ。

 それは九州男の矜持ですかね?

 九州男ってそうなんですか?

 何かそういうとこないですか? 自分から「俺はすごいぜ」って主張したくないけど、周りからそっと認められたい、みたいな。

 そうですね。淡々としていても、残るものはちゃんとありますよっていうのが理想ですね。過剰になるのはやっぱりどうなんだろうって思っちゃう。
やっぱり以前と比べると変わってきてますよ。最初はそれこそ衝撃度が大きいもの、こんなすごいことがあったんだっていう記事を出したいなって思っていました。

でもそのうちにそういったものから離れたくなって。で、淡々としているけど、ちゃんと熱がこもっているものを書くにはどうしたら良いのかなっていうのを、ここ何年もずっと考えているんです。ただ、なかなかそれで伝わらなかったりするんですけどね。

 まあインパクトの部分でいうと、金子さんみたいな書き方がインパクトがあるかもしれないけど、それは大袈裟過ぎるっていうことですよね。

 そうですね。難しいことを聞きますね、えのきどさん(笑)。でも、もちろんあれはひとつのスタイルだっていうのも分かってますよ。

 いやいや、やっぱり同業ですから(笑)。

 色川武大さんの作品もそうですけど、僕は純文学っていうよりは、どっちかっていうとエンタテインメント色が濃い方が好きなんです。読んでいる人を楽しませましょうっていうのが。最近でいうと奥田英朗さんですね。『サウスバウンド』は最高ですよ。
だからB級というかそっちの方、直木賞や芥川賞にはあんまり引っかからないなっていう作品の方が愛情を持てます。

サッカーでもそうなんです。だからヴェルディの記事を書くことになったっていうわけでもないんですけどね(笑)。でも確かに当時はいやらしい計算ってありましたよね。今のヴェルディだったらって。レッズでもマリノスでもなく、ヴェルディだったらライターとして食い込むチャンスがあるんじゃないかっていう。多分そういう計算がどこかにあったんだと思いますね。



≪第2弾 パート3 了≫

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