メイキング・オブ「十番の夜」! 第2弾 パート10

フットボールライフ・ゼロvol.2の「十番の夜」の未収録部分を大公開! 【パート10】

※今回からは「フットボールライフ・ゼロ vol.2」の誌面ではお伝えすることができなかった「十番の夜」の未収録部分を公開しちゃいます!

未収録コーナー


※「クラブについての楽しい記事ばかりを書いていられないのが、この仕事の大変なところ」と海江田さんはライターの難しさを語る。一方、えのきどさんは、スポーツ選手の身の丈の能力について、実際の取材での話しを交えて語った。


登場人物;
=えのきどいちろう  =海江田哲朗  =中山淳(編集長)  =後藤伸二(本誌スタッフ)



 ひとつのクラブに長い間ついて記事を書いていて難しいと感じるのは、クラブの調子が悪いときなんです。そういうダメなときには、「ダメだ」って書くわけです。もちろん、あからさまに「ダメだ」って書き方はしないですけど、それでも問題を掘り下げて、誰にも望まれない記事を表に出さなきゃならない。

でも、「僕がやらねば」という気持ちはないんですよ。ただ必然的にそう迫られるんです、それがヴェルディでいちばん価値のある情報だからって。僕の書き方に問題があるのか分からないですけど、やっぱり書くことによって多少の軋轢が生まれるわけです、選手や監督、あるいはクラブの人と。でも、そうなったらそうなったで、ある程度は仕方ないと思っていたんです。

ところが、僕自身はあまりストレスを抱えない人間だと思っていたんですけど、そういう記事ばかり書いていると意外と体に変調をきたしましたね。一回書いてそれっきりで済むならまだ良いんですけどね。

僕も楽しい話ばかりを書きたいのはやまやまなんですけど、やっぱりそういうわけにもいかないですから。楽しい記事が求められていないときには、そうでない記事も書かなきゃいけないですよね。

 それはしょうがないですね。

 そうですね。

 誰に向いているかっていう話ですよね。読者の方を見ているのか。あと、何を求めているかっていうところですからね。だから難しいよね、それは。実際、辛いですよね。

 ヴェルディの場合、ここしばらくは長い目で見られそうなんです。「今度J1に上がったらJ2に落ちないチーム作りを」っていうのが大枠ですから。多少は長い目で見られます。

僕が良くないのは、自分は他人からあんまりとやかく言われたくないくせに、他人には言ってしまうところですよね。自分の中の感覚が麻痺するって言うか。

例えば「ブラジルでは監督は批判されることが仕事だ」って言ってみたりして。でも、ここは日本だっていう話なんですけどね。酔ってしまうというんですかね、変な酔い方で。その辺のバランスの取り方が難しいというか。

ただ、それだったら業界ウケは良いと思うんですよ。「またアイツが何か言ってるぞ」みたいなことで。でも、そういう風に見られるのも気持ち悪く感じたりすることもあったり。日本サッカーはそれでも批判されることが足りないとは思いますけど、あまりギズギスし過ぎても楽しくないっていうところもあります。

 批判も楽しく思える世界だと良いんですけどね。

 本当にそうですね。

 僕はもちろんヴァンフォーレがすごい好きなんですけど、「もっと頑張ってくれよ!」って思う選手もいますね、やっぱり。でもそれを含めてヴァンフォーレだから。それも「遊び」というか。でも、実際にその選手がいなくなったらさびしいな、みたいな。

 ファイターズもそうなんだよね・・・・・・。

 そうだ、えのきどさんはそういう勝てない時代のチームのことをよく知ってるじゃないですか。

 ええ。ちょっと前までファイターズってずっとダメだったんですよ。それでも90年代に3回くらい優勝しそうになったことがあったんですけど。特にそのうちの2回目は、オールスター戦明けまで2位を6ゲームくらい離して首位を走っていたんだけど、その後失速しちゃって。

こっちにしたら「何だよ、それ」って感じですよ。もう傷つくっていうか、野球のことを考えたくないなと思いながら、それでも球場に行くっていう。そんなときはなるべく気持ちを野球から離したいって思いながら球場に行くんです。

 それでも球場に行くんですね。

 行きますね。だから6連敗を6回見たりするわけですよ。野球で6連敗するっていうことは、毎日負けているってことだから、すごく嫌なわけですよ。球場に行って「うーん、これは我慢だな」って。我慢をするために球場へ行くわけですよ。

で、試合が始まって2回で既に8点取られて、もうこれは負けだなっていう試合なんて、ゲームとしてはつまらないじゃないですか。そんなときは、「一塁塁審らいし動きって何だろう?」とか別のことを考えるわけですよ。何かそうやって視点を変えてみたり。で、そこから一塁塁審について考えてみたりさ。

あと、ダメな選手の話だとね、野球の場合、「遠くへ飛ばせる能力」があって、これは持って生まれたものです。あとは足が速いとか、そういう何かはっきりした特徴がある選手は良いんですけど、そうじゃない、何に関しても平均的な選手ってやっぱりいるわけですよ。

ところがそんな選手でも、うっかりその身の丈を飛び越える瞬間ってあるんですよ、魔がさしたように(笑)。そんな選手の活躍を見た日は、「俺はこの日のお前を覚えてるぞ!」みたいな。「お前にとって今日という日はスペシャルな日だ」と。優勝もかかってないし、何でもない平場の試合なんだけど、「今日、お前はお前を飛び越えた」って。でも、翌日からまた元に戻ったりする。

逆にものすごいスペシャルな選手っていうのはさ、勝負がかかったすごい試合で実力以上のものが出ちゃったりするんですよね。そんな「持っている」選手っているじゃないですか。

それって本当にすごいですよね。例えば、WBCのキューバ戦の松坂とかさ。あれだけ普段球数が多いピッチャーが、あんなピッチングをするって、やっぱりスペシャルな選手なんでしょうね。でも、たいがいの選手は努力して、努力して、努力して、でもやっぱりダメなんです。

でも周りの人は、その努力が「うっかり実ったような感じで」っていうストーリーを思い描くと思うんですが、実際にそんなことはほとんどないわけで。もちろんそういう人もいるけど、それは稀なんですよ。でも、そんなうっかり身の丈を越えちゃった選手のことも覚えておこうって僕は思うわけですよ。

 またそれが印象に残っちゃうこともありますよね。

 そう。例えば以前、岩本輝が新潟戦で地を這うようなシュートを決めたことがあって。その後に岩本に「あのときはどういう感じだったの?」って聞いたら「自分でもわからない」って言うわけ。その日は「全部俺に蹴らせろ」、みたいな感じで、蹴ったら全部入るような気がしたんだって。

完璧とはまさにこのことっていうさ。岩本は「今でも覚えてますよ」って言うわけ。しかもそれが何でもない平場の試合で、新潟に負けた試合だったよ。だけど、うっかりそこでそういうのが出ちゃったんだけどさ。あと、原博実さんに聞いたことがあるのは、あの韓国戦。有名な雨の国立競技場での試合。

 原さんが現役のときですね。

 動きがストップモーションで見えて、ゴールが入るところまで自分で想像がついたって。そこで止まるような気がしたんだって。それがいわゆる『ゾーン』に入ってるっていうことですよね。原さんも、「またあの感じにならないかな」ってずっと思ってたんだけど、結局ならなかったって言うんです。

原さんの場合は大舞台でそれができる、そういう能力というか器がある人だったんだけど。そういうことってやっぱりあってさ、それは、ずっとダメな物を見ているっていうことも大事なんです。で、ずっとそこを超えられないっていうのを見てるのも大事で。

 そうかもしれないですね。

 でもありえないって思っちゃいますよね、そんなことができる選手って(笑)。



≪第2弾 パート10 了≫

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